Journal of Neurochemistry (JNC誌)への投稿お願い

日本神経化学会
会員各位

神経化学会員の皆様、副理事長の田中謙二です。
ここでは、私がJournal of Neurochemistry(JNC)のsenior editorに就任したこと、そもそもJNCとはどんなjournalなのかという説明、是非JSN会員の皆様にJNCへの投稿を考えて頂きたいことをお伝えしたいと思います。

JNCはISNのofficial journalで、1956年から続く歴史あるjournalです。
現在は、メルボルン大学のAndrew Lawrenceがeditor-in-chiefを務めています。
Andyが2014-2016年までAPSN(Asia-Pacific Society for Neurochemistry)のpresidentをつとめていたことをご存じの方も多いと思います。
私の師匠の故池中一裕先生を偲ぶ記事にもAndyの追悼文が寄せられています。
http://www.apsn-neurochemistry.org/gallery/in-memory-of-dr-kazuhiro-ikenaka

JNCの歴史については、”The origins and early history of neurochemistry and its societies“という論文に詳しく書かれています。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jnc.14839
著者の一人のAnthony TurnerはJNC愛がとても強く、今年のISN-JNC flagship school( https://www.neurochemistry.org/isn-jnc-flagship-school/ )にも夫婦で参加され、夫婦揃って学生に論文の書き方を指導するtutorialを担当されていました。
上述した論文Fig 1の一番左に居る方がTonyです。
Fig 5には、歴代のeditor-in-chiefが並んでいます。
その中央に鈴木邦彦先生がおられます。
鈴木先生はISNのpresidentも務められた日本の神経化学を代表する研究者です。

現在、JNCは9つの分野にsenior editorを配置しています。
https://onlinelibrary.wiley.com/page/journal/14714159/homepage/editorialboard.html
論文が投稿されると、editor-in-chiefが各分野のsenior editorへ論文を送り、senior editorがhandling editorを指名し、handling editorが査読者を指名して論文の査読が行われます。
私は、2019年よりhandling editorを担当していました。
2025年から新しい分野としてmethodologyを扱うことが決まり、そこを私がsenior editorとして担当することになりました。
ISN広報担当からインタビューを受け、それが記事になっているので、もし良ければご覧下さい。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jnc.16277
神経化学愛を存分に語らせてもらいました。

あらためて分野を見て頂ければ分かると思いますが、JNCは脳の疾患とその分子メカニズムにフォーカスをあてています。
そのため観察しただけの論文は、journalのscope違いということで、editorial rejectionをすることが殆どです。
現在のimpact factor(IF)は4-5点を行ったり来たりですので、会員の皆さんの本気論文を、最初にJNCから投稿することはないと推察します。
おそらく皆さんは、IF 10点越えを先ず目指し、各journalを渡り歩くことと思われます。
どこからもrejectされたときに、このままお蔵入りにするか、いやそんなことはできない、じゃあどうする?どこに投稿する?と悩まれると思います。
そんな時に是非JNCを候補として考えて頂きたいです。
JNC Editorial boardをご覧になると、皆さんのお知り合いをちらほら見かけると思います。彼らがsenior editorからhandling editorに差配される保証はないのですが、差配されることを期待するのは自由です。

一つ、あたらしいsectionであるNeurotools, Methods & Neurochemistry Resourcesについて宣伝させて下さい。
真に新しいツール開発の成果は、Nature Methodsに載ればベストでしょう。
ぐっと下がってCell Reportsのresource section (IF 8-9点)。
それ以外になるとCell Reports Methods(IF 4点台)、Journal of Neuroscience Methods(IF 2点台)になります。
JNCはIF上、Cell Reports Methodsと大差ないですが、open access journalであるCell Reports Methodsの掲載料が5000ドル(75万円)であることを考えるとどうでしょうか。
論文内容が神経化学に特化していれば、掲載料無料を選択しうるJNCを検討して頂きたいです(*脚注)。
JNCに新しいツール開発の成果を投稿して下さって全く構いませんが、真に新しいものであればJNCよりもっと高いレベルで戦った方が良いと思います。
新しいツール(といっても公知)を使ってできる新しいアプリケーション、既存のツールの組み合わせで達成できる新しいアプリケーション、神経化学に必要な実験リソース、などを投稿して下さると嬉しいです。
Methods paperを受け入れるsectionなので、観察研究であっても採用します。
何か疑問点がありましたら、遠慮無く相談して下さい。

(脚注)
JNCはHybrid Journalという出版形式です。
Hybrid Journalの雑誌は、アクセプト後に著者がオープンアクセス料金を支払うことで論文をオープンアクセスにすることができます。
JNCのオープンアクセス料金は5000ドルと同様に高額ですが、オープンアクセスにしない掲載料無料という選択も可能です。
またISN会員であれば、1000ドルでオープンアクセスにできるお得な制度もあります。