【日本神経化学会】委員長だより(脳研究推進委員会)
脳研究推進委員会の委員長を拝命しております理化学研究所の林(高木)朗子です。委員の先生方は、大塚稔久先生、金子奈穂子先生、七田崇先生、津田誠先生、橋本亮太先生、尾藤晴彦先生、山中宏二先生、和田圭司先生という(五十音順)、大御所の先生から新進気鋭の若手ホープの先生まで参画頂いております。また将来計画委員会(委員長:田中謙二先生)とは、とりわけ緊密な連携をとらせていただき、もろもろの決め事を進めてまいりました。本年度の活動で最も大きかった案件は、岡野理事長の御提案により発足した「フラッグシップ・プロジェクト(以下:FP)」と思います。総会等で既にご説明した通り、本学会の強みである、“分子”、“グリア”、“病態”を前面に出したエッジの効いたプロジェクトを掲げようというものです。その狙いは、研究の加速です。昨今の脳科学は飛躍的な進歩を遂げ、様々な脳の機能についての膨大な知見が集積され、多くの精神神経疾患についての理解が進み、少なくとも一部については治療が視野に入ってきました。一方で、脳機能の全容解明には長く困難な道のりが続いており、疾患の克服のためには、本学会が誇る幅広い学問分野の力を有機的・学際的・戦略的に結集する必要があります。創造的イノベーションは異分野のセレンディピティ的な融合により生み出されることが多いため、FPを素地として英知を結集する場を形成することで、研究融合のケミストリーを加速しようというものです。このようなプロジェクトの元に、共同研究の実績、研究成果などの蓄積を形成したならば、時宜をみて、脳科連、ライフサイエンス委員会、日本学術会議、AMEDなどのポリシーメイキングへ反映させ、大型予算の獲得を目指すことも視野に入っています。それにより、本学会の多くの会員が利益を享受し、益々の発展を遂げることが期待されます。
というように、壮大な大風呂敷を広げたようなことを申しておりますが、現実には中々難しい膠着状況が続くと思われます。しかし、弾丸は用意していなければ、いざという時に弾切れ確定ですので、ブレインストーミングを兼ねて、弾丸を用意しておこうというわけです。わたくしのかつてのメンターであった澤明先生は、しばしば仰りました。「頭を使うことは“ドル”を使いません。手を動かす前に(ドルを使う前に)、頭を沢山使ってください」。仰る通りで常日頃から学会全体を巻き込み、おおきなブレークスルーを虎視眈々と狙っていくことに“円”はかかりません。そこで、呼び水として、FPキックオフシンポジウムを、2022年7月8日に慶應義塾大学三田キャンパスで開催することになりました。本学会を代表する演者として、岡野栄之先生、田中謙二先生、小泉修一先生、村松里衣子先生に御登壇いただきます。また、世界の潮流の中で、われわれ日本神経化学会のめざすべきものに関して活発な議論をおこなうために、脳科連代表・伊佐正先生、文科省・ライフ課・武田課長にも指定討論者として御参加いただきます。どのような展開になるのか、今から楽しみです。ハイブリット形式ですので、オンサイトでもオンラインでも、皆さまのご都合の良いように、奮ってのご参加をお待ちしております。
参加登録:https://keio-univ.zoom.us/webinar/register/WN_o9GvG9r0Tam31TFZpUq3JQ
脳研究推進委員会
林(高木)朗子
(2022年5月6日)