若手KYOUEN

日本神経化学会は、脳の機能を分子のレベルで理解し、未だに治療薬が見つかっていない神経・精神疾患などの病態を解明して、新たな診断方法や治療法の開発を目指す研究者が集う学術団体です。1958年に設立された本学会には、上述した明確な理念がありますが、本学会がもう一つ大事にしていることが若手研究者の育成です。若手KYOUENは、今期の将来計画委員会(田中謙二委員長、七田崇副委員長、宝田美佳、竹村晶子、澤田雅人、糸数隆秀、増田隆博、白鳥美穂)が企画した若手研究者育成のためのプログラムの一つです。

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既存の若手研究者育成プログラムとして、2008年から始まる若手育成セミナー、2016年から始まる若手道場があります。これらのいずれも、学部生、大学院生、学位取得後5年程度までの若手を対象にしたプログラムで、多くの若者を脳研究に参画させて世界第一線の研究者として育てあげることができています。昨今の人材育成に関する課題は、学位取得6年以降から研究者として独立するまでの若手研究者(およそ35-45才、以下準PI)の独立を援助する仕組みがないことでした。そこで学会が主導する若手育成の第三の矢として、まず試験的に将来計画委員会主導で若手KYOUENを行いました。若手KYOUENには、若手の饗宴、競演、共演、共ENjoy、共ENcourageという意味を込めています。

第一回の若手KYOUENを2023年6月24日に東京お茶の水で行い、35-45才までの18名の研究者の発表、その後の懇親会によるネットワーキングを行いました。参加した研究者は関東圏において新進気鋭の脳科学研究者です。将来計画委員会が参加を打診致しましたが、ほぼ全ての研究者が参加を希望したことから、今回のような仕組みが切望されていたことが窺えました。自らの成果を発表しフィードバックを受けることは通常の学術集会でも可能ですが、年代の近い者同士がお互いの悩みを共有し、励まし合うことまでは及びません。第一回の若手KYOUENを通して、このプログラムには若手同士が励まし合う効果に加え、トップサイエンティストの背中を追いかけるのではなく自らが独立に向けて覚悟を持つ機会になることが期待できると将来計画委員会で結論しました。

この試みを2023年7月5日の理事会で報告し、今後も若手育成の第三の矢として学会に根付かせることができるように継続してほしいとして承認されました。大会期間中の評議委員会でも若手KYOUENが議論に取り上げられ、評議委員にも認知されることとなりました。学会から正式に承認された試みではあるものの、活動資金は将来計画委員会自らが得ていくことが理事会から注文されました。若手育成セミナーも最初の頃の運営には学会からの資金援助がありませんでしたので、学会員の皆さんにその効果を認知していただくまで努力するのは当然の流れでしょう。

今後は、この新しい取り組みを継続することで準PIを援助する仕組みを体系化するとともに、各地方都市で行い地域の研究者同士のコミュニティーを育て、脳・神経研究の若手研究者全体の底上げにも貢献したいと思います。今期の2年間、若手KYOUENは年に2回、上半期と下半期に1回ずつ行います。第2回は金沢(2024年1月27日、宝田委員担当)、第3回は名古屋(2024年上半期澤田、竹村委員)、第4回は大阪(2024年下半期、糸数委員)を予定しています。将来的には、準PIのための新しい地方会、各都市を巡りながら若手研究者育成も実現させる新しいシンポジウム(饗宴)として根付けばよいと考えています。これら4回の活動を振り返り、次期執行部へバトンタッチします。

将来計画委員長 田中謙二

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